第19回 夢の実現:星出宇宙飛行士 |
今年6月1日、ついに元茗溪生が宇宙に飛び立ちました。 ![]() このシリーズ「その15 宇宙に一番近い学校」で紹介した茗溪出身の宇宙飛行士、星出彰彦氏が宇宙ステーションでの役割を果たしてディスカバリーで無事帰還しました。 星出氏の少年時代の夢は「将来、宇宙にいくこと」。茗溪学園に寮生として入学したのも、科学都市つくばに新しくできた寮制私立学校(星出氏は6回生、創立3年めに入学しました)で当時の宇宙開発事業団筑波宇宙センターに近く、“科学の風”に触れられることが理由のひとつでした。 もともと明るく活発な星出君は、寮生活で集団生活に必要な規律とSocial Skillsを学び(当時の茗溪の寮はかなり集団主義教育に力を注いでいました。現在は随分と個人の部分を認めています。)、茗溪でStudy Skillsとどんなことにも挑戦する勇気を身につけて、夢を大事に育み続けます。彼が高校2年の個人課題研究で選んだテーマが『宇宙ステーションについて』。彼の研究計画カードの研究目的には「スペースシャトルの知識を取り入れ、航空力学・航空宇宙学の両面からその形態の由来と将来、そして理想的な形態を考える。また、時間があれば材料・エンジン(推進機)についても考えたい。」、研究方法には「主に図書館の文献資料から、飛行機とロケットの違い、スペースシャトルの歴史・形態について、航空力学・航空宇宙学の知識などを取り入れる。また、筑波宇宙センターも利用したい。」と書かれています。 実は星出君は夢の実現のために更に有効なプロセスを描きます。創立時から茗溪学園はUnited World College(UWC)への留学を積極的に応援し、経団連からの奨学金を得て留学する制度に合格するためのサポート態勢を続けていますが、星出君はこの制度を利用し、海外に留学して国際性と英語力を磨く道を選択します。選抜試験にも合格し、彼が留学先として選んだのがUWCシンガポール校。高校2年の9月からの留学のため、彼の個人課題研究は未完成のままですが、実現のための確実なステップを刻んでいました。 帰国後進学先として選んだのが慶応義塾大学理工学部。ここで流体熱力学を身につけて、就職先は当然、宇宙開発事業団(NASDA、現JAXA)。本当に脇目も振らずに“宇宙狽ワっしぐらです。NASDAで実務を担当しながら宇宙飛行士試験に挑戦しますが、2回連続で不合格になります。が、多少の困難など気にしない茗溪魂。不合格になりながらも、その英語力とコミュニケーション力(Social Skills)、技術力は評価されていてついに3回目にして合格。念願の宇宙飛行士に採用されたのでした。 何度か延期された打ち上げに向けて、同期や先輩の仲間たちが歌を作ってくれました。実は創立以来の茗溪教育の柱のひとつに「3人寄ればハーモニー」というものがあります。嬉しいときや記念になるような大事なとき、節目のときなどには歌を歌おう。みんなで歌える歌を持っておこうというものです。中学1年から毎年学年合唱曲を歌い続けていくため、6年間で学年全員で歌える歌は10曲以上になりますし、中学1・2年はクラス毎に合唱コンクール、また3月の卒業生を送る会(六送会)では全学年、学年合唱を披露します。入学式でも必ず合唱を披露します。(茗溪学園のこの合唱曲編曲集『うたいたいうたをうたいたい』(ドレミ楽譜出版社)は書店でお求めになれます。)仲間の誰かが嬉しいとき悲しいとき、茗溪生は大げさなことはしませんが歌を歌います。 今回の、宇宙への旅立ちに際しては、オリジナル曲『ロボットアームで抱きしめて』。YouTubeで視聴できます。作詞は同期で水泳部仲間梅村太郎氏、作曲は同期の塙裕介氏。やはり同期の水泳部仲間でニュースキャスターの大高未貴さんがニュースで紹介したシーンもYouTubeでご覧になれます。歌詞がまた茗溪生らしい。「宇宙なんて案外近いものさ。直線400キロ、車で4時間・・・」のんびりした、気負いの無い優しさにあふれていて、心から仲間の宇宙への旅立ちを優しく見守っている、「よかったなあ、夢が実現して。無事帰ってこいよ。そしてまた飲もうぜ。」という声が聞こえてきそうな歌です。 宇宙ステーション滞在中の6月8日早朝、NASAとステーションの通信回線を10分ほど日本に開放してくれた“VIPコール煤B福田首相・渡海文部科学相・駐日米国大使とともに、3人の茗溪生が宇宙の先輩と交信しました。そのうちの一人、永井日香里さんは寮生でアメリカからの帰国生です。 最後に、在校生から星出氏へのメッセージと、彼の返事を紹介します。 |
星出彰彦さんへ いよいよ待ちに待った日がやってきましたね。体調は万全ですか?出発前でやや緊張気味かと思いますが、今日は、後輩である私たちから明日出発を迎える星出さんにエールを送りたいと思います。私たちは先輩である星出さんが宇宙に飛び立つと聞き、とても誇りに思っています。このエールが少しでも星出さんの力になってくれれば幸いです。 学生時代から「夢の実現」を目標に頑張り、それを達成された星出さんを、とても尊敬しています。私たちも星出さんのようにそれぞれの「夢の実現」に向けて日々努力していこうと思います。そして、いつか星出さんのように自分たちの夢が叶えられたらいいと思います。 辛くなったときは、みんなで歩いて登った筑波山や荒波の中を泳ぎきった臨海訓練など茗溪学園で苦しいなか皆で協力し合って達成できたことを思い出してください。無事宇宙に到着し、成果のある仕事をなされ、帰国されることを願っています。安全と健康には十分気をつけて行ってきてください。 帰国されたら是非、茗溪学園に遊びに来てください。そして、宇宙での様子や感想を私たちに聞かせてください。 最後になりますが、宇宙へ行っても茗溪学園で学んだことも含め、今までの成果をいかし頑張ってください。私たち茗溪生一同心より応援しています。 平成20年5月31日 茗溪学園生徒会一同
茗溪学園の皆様 暖かい励ましのお言葉、ありがとうございました。 JAXA 宇宙飛行士 星出彰彦 (原文のまま) |
筆者 : 自己紹介 |
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茗溪学園中学校高等学校 教務部長 広報・入試係 化学の教師です。 茗溪学園では前向きで明るく逞しく積極的な青年が育っています。 「有名大学に行きたいから勉強する」のではなく、「中学・高校時代にいろいろな事に挑戦し、失敗し、考え、自分を探して、自分で自分の将来をみつけ、自分で歩んでいく。その方向が地球を救い、人類の未来を拓く方向であってほしい。」そう考え、支援するのが茗溪学園の教員の役割です。 海外生・帰国生が自分の力で自分の未来を切り拓いてきた経験はここで開花します。これまでたくさんの帰国生が、夢を追いながら進学していく姿を見て応援してきました。 よろしくお願いします。 茗溪学園の「Study Skills」やカリキュラムについてのご質問は、 |